比較・最終章(9巻)

(8)動き出す夜

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納めろ 収めろ
垂れ布 垂布
傭兵(さといへい) 傭兵(やといへい)
垂れ布のむこうにいる男 床下に潜んでいる男
大王 華やかな大王
教えてくれないかな 教えてはくれぬかな
  やがて腹を括ったかのように、あっさりといった。
それは、もののたとえで…… それは、もののたとえで……?

 

(9)春日野の朝

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星月夜 月夜
三十歩(みそほ) 三十歩(みそあし)
顕れをみたとき、 顕れをみれば、
見える 見えた

 

(10)息長の火箭

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お還えり お還り
なぜ、佐保なんだ なぜ、佐保なんだ!
風にそよぐ葦草のように、 (削除)
あまりにも揃いすぎる あまりにも災禍が揃いすぎる

 

(11)拉致う者

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全身が怒りで 怒りで全身が
村娘
嬉しいだろうと思って…… 嬉しいだろうと思って、持ってきたの……
鮮明(まざまざし)く 鮮明(まざまざ)しく
幾日か 王子たちは幾日か
向けられたものだった 向けられたものに違いない
忌矢(いみや) 忌矢(いわいや)

 

(12)佐保に入る

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唐黍の粉袋 蜀黍の粉袋
絶たれ 断たれ
この十年あまり この二十年あまり
二十六、いや七年前の 二十七、いや八年前の
甲(かぶと) 甲(よろい)
短甲を避けて、まもりのない項 男が身に着けた短甲を避けて、まもりのない黒ずんだ項
血を流しながら 血を流して
助けようと かかえて
かすかな声をあげていた かすかな声をあげて、まだ生きていた
馬に乗ったまま 父王は馬に乗ったまま
日子坐の馬が近づいていた 日子坐がそこにいた
女の死体 女の骸
美知主の弱さ 美知主の優しさ
苛烈(かれつ)さ 苛烈(はげし)さ
忌矢(いみや) 忌矢(いわいや)
二十数年前 二十八年前
ここに来ているのだ 俺はここに来ているのだ
女首長 わが女首長
  国毘古はあっさりといった。
何回か 幾度か

 

(13)死の臭い 日の勾玉

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二十七年前 二十八年前
心にうかんだ 心をよぎった
穏やかで人馴れした男ではない 穏やかで人馴れした、ものごしの柔らかな男ではない
  会ったことも、見たこともない男だが。
波美の者 並みの波美の者
真秀だ 真秀だった
半年ほどの間 向こう半年ほどの間
その娘たち その娘
見たせいだった 見たせいかもしれなかった
幸せに生きられたはずだった 幸せに生きられたかもしれない
父王・日子坐 父の日子坐
  そうだな。
木棺(もっかん) 木棺(ひつぎ)

 

(14)迷い込んだ小鳥

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甲(かぶと) 甲(よろい)
侮るものなのですよ 侮るものだよ
悟った 思い定めた
宴があってから、ときおり氷葉州姫の御館に遊びにくるようになっていた 宴があった翌日、すぐにも氷葉州姫の御館に遊びにきたのだった
  だが、そうするには請負代がいる、おまえにそれが支払えるのかな、と。

 

(15)王宮の妻屋に

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唇が 口もとが
ふと目を伏せた あわてて目を伏せた
穂波の…… 穂波の心を……
眦に刻まれた 眦をいろどる
近いうちに その年の新嘗の頃には
片足 片足首
そっとしておいてくれるわ そっとしておいてくれるもの
雄々しい獣
身ぶり 口ぶり

 

(16)真秀と佐保姫

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遠い淡海 まだ見ぬ遠い淡海
これは霊力だ。(中略)佐保姫は息をのんだ。これは禍霊だ。 佐保姫は息をのんだ。これは霊力だ。(中略)これは禍霊だ。
力をふりしぼって妻屋に足を踏みいれると、氷葉州の妃の足もとに 佐保姫は力をふりしぼって妻屋に足を踏みいれた。氷葉州の妃の足もとに
卓子に腕をついて 卓子の縁を両手でつかんで
髪を摑まれて……? 髪を摑まれて……