比較・最終章(10巻)
(17)那智はめざめる
降り続いた | 降りつづいた |
頑強い御身をおもちの方 | 頑強い方 |
贄 | 御贄 |
悠然(ゆうぜん) | 悠然(ゆったり) |
年がおなじ飛羽矢は、 | 年が近い飛羽矢は、*1 |
危惧(おそ)れ | 危惧(おそれ) |
翔けり | 翔り |
赴いた | おもむいた |
速穂児が面食らったように、まるで糸に操られた傀儡のごとく、力なく頷いた。 | (削除) |
葛城や王子 | 葛城一族や襲津彦 |
駆け引き | 駆けひき |
透視したのか | 透視して確かめたのか |
独りごとのように呟く速穂児の横顔に、穂波はふと、佐保彦の王子を思いだした。 | 速穂児が独りごとのように呟いた。穂波はふと、佐保彦の王子を思いだした。 |
告げたのだ | 告げたという |
このまま王宮にいたほうがいいのではないかといいだしたのだった。 | 自分はこのまま王宮にいたほうがいいのではないかといいだしたという。 |
真秀には霊力があるわ。 | あなたには霊力があるわ、真秀。 |
津波 | 水龍 |
月眉児がはっと息をのみ、佐保彦の王子は、だが、佐保姫の身だけを案じていた。長いこと窓辺に佇ち、 | だが、その説明も佐保彦の王子を宥めることはできなかった。王子は長いこと窓辺に佇ち、 |
乱れていた心を何とか鎮め、 | (削除) |
これは美知主が、先を読んで仕掛けた罠といえるかもしれない。 | (削除) |
危惧(きぐ)し | 危惧(おそ)れ |
隠し立て | 隠しだて |
(18)響きあうもの
聞かせてくれないか | 聞かせてはくれまいか |
「穂波、証拠のないことを、口にしてはいけない」国毘古が諫めるのを、椎根がさえぎった。「いや、そうだ。(中略)おまえらしくない口軽さだぞ」*2 | 「穂波、証拠のないことを、口にしてはいけない。おまえらしくない口軽さだぞ」国毘古が諫めるのを、椎根がさえぎった。「いや、そうだ。(後略)」 |
いっそう騒がしくなり、それは穂波に、大闇見戸売が霊力を甦らせ、御影とその子は淡海にいると闇見した夜を思いださせた。 | いっそう騒がしくなった。それは穂波に、大闇見戸売が霊力を甦らせた夜、御影とその子は淡海にいると闇見した夜を思いださせた。 |
御影も滅びの子も | 御影も、御影の子のひとりも |
駆け降りた | 駆けおりた |
時季(とき) | 時期(とき) |
巫女姫の心のうちは知りようもない……。 | |
甲(かぶと) | 甲(よろい) |
戦勝(いさお) | 戦勝(いさおし) |
自らに課していた | 自らに戒めていた |
死の影 | 死の兆 |
霊力を顕した。そう凄まじいものではなかったはずなのに、 | たしかに霊力を顕したが、それは、そう凄まじいものではなかったはずなのに、 |
母の異変さに心乱れて泣く王子が、子どものように稚く見えた。 | |
神殿(かむやしろ) | 神殿(かむどの) |
この春日野で、日子坐と出会い、見初められて真澄を身籠もったこの草原で、 | この春日野で—日子坐と出会った春日野、彼に見初められて真澄を身籠もったこの草原のかたすみで、 |
(19)川の流れの果てに
高志の姫 | 高志の妹姫 |
だれか | (削除) |
腰掛けた | 腰かけた |
お預かりしているの | 預かっているの |
ないのよ | ないのだよ |
降りしきる | ふりしきる |
降り続いた | 降りつづいた |
止み | やみ |
見晴るかす | 見晴かす |
濡れた | (削除) |
溺れた者が川岸にしがみつくような力だった。 | (削除) |
降りだしそうな | ふりだしそうな |
凶々(まがまが)しい | まがまがしい |
鮮明(まざまざ)しく | まざまざしく |
封じこまれていた | 操られている |
瞬いた | みひらいた |
ものだった | ものらしかった |
(20)闇の闘い
見上げた | 見あげた |
放り投げ | 放り捨て |
(21)神夢――産屋
遠目に眺めて | (削除) |
三十年以上 | 三十年近く |
甲(かぶと) | 甲(よろい) |
降り降ろされた | 降り下ろされた |
真秀を、御影や真澄を傷つけるものは、誰ひとり許さない。たとえ佐保一族であっても。 | (削除) |
飛火野の忌屋にこもられている意沙穂の王子に、すぐに使いが発ちました*3 | 飛火野の忌屋にこもられていた意沙穂の王子は、すでにこちらに向かわれているとのこと…… |
すすり泣きながらいった。 | すすり泣いた。 |
さらに息づいて | つよく息づいて |
死を与えられてしまうわ | 死を与えられてしまう |
たった今…… | すでにもう今…… |
(22)今ひとたび春日野の朝に
女首長 | 王族 |
赤く充血し、 | 赤くにごり、 |
投げ出された | 投げだされた |
無数の艀 | たよりない艀 |
籠めた | こめた |
やがて淀川に瀬を合わせ、 | (削除) |
誓(うけ)い | 誓(ちか)い |
繰りだしてゆく | くりだしてゆく |
独り言 | 独りごと |
遥か | はるか |
(23)死はすべてを解き放つ
揺るぎ | ゆるぎ |
費やす | ついやす |
置き換えて | おきかえて |
出会い | であい |
真澄の霊力 | 霊力 |
妹を叱りつけるように呟き、 | 妹を叱りつけるように呟いた。 |
封じる | 封(と)じこめる |
奴婢たちが老いや病のために、 | 老いや病のために、奴婢たちが |
強張っている | (削除) |
真澄だったかもしれない……。 | 真澄だったかもしれないのだ……。 |
(24)大王は需める
常 | つね |
捨て置かれ | 捨ておかれ |
締まり | しまり |
武力(いさお) | 武力(いさおし) |
恐怖(おそ)れ | 恐怖(おそれ) |
打ち明け話 | うちあけ話 |
鉄甲(かぶと) | 鉄甲(よろい) |
疎々(よそよそ)しい | 疎々(うとうと)しい |
国毘古 | ”国毘古” |
続け | つづけ |
春日山のひとつ | 佐保山中 |
控えていた | ひかえていた |
躊躇(ためら)い | 躊躇(ためらい) |
しだいにふしぎな胸の轟きを覚えた | しだいに、ふしぎな胸の轟きを覚えた |
覚えがある | おぼえがある |
見極めた | 見さだめた |
敵意はなかったが、 | なぜか敵意がみなぎり、 |
氷よりも冷たく | 冷たく |
受け止めていた | 受けとめていた |
声が喉奥で凍りついた | 声が凍りついた |
低い枝をだしている木に駆け寄り、 | 低い枝をだしている木をみつけた。その木に駆け寄り、 |
佐保姫の名を囁いた。 | 佐保姫の名を囁いてみた。返事はなかった。 |
塊 | 群れ |
(25)死の忌屋で
春日山中 | 佐保山中 |
大闇見戸売 | 母 |
玉を連ねた枕 | 玉枕*4 |
喘ぐ | あえぐ |
行き合いませんか | ゆき合いませんか |
危惧(おそ)れ | 危惧(おそれ) |
お母さま | 母さま |
鮮明(まざまざ)しく | まざまざしく |
荒々しい | あらあらしい |
(26)血の涙を流す夜
なぜ、ないのだろうととっさに思い巡らし、 | なぜ、ないのだろうと思い巡らし、 |
口の中でその言葉を繰り返した。 | その言葉を繰り返した。 |
痙攣(ひきつ)った | ひきつった |
乳母(ちのと) | 乳母(めのと) |
探り | さぐり |
振り降ろした | 振り下ろした |
それが佐保彦の魂を昂らせた。 | (削除) |
降ろして | 下ろして |
振り降ろせるように | 振り下ろせるように |
その燿目は真澄の | その燿目は、真澄の |
扉口に | こちらに |
切っ先 | きっさき |
飛び散った | とびちった |
喘ぎ声 | あえぎ声 |
善し | よし |
受け止めた | 受けとめた |
虚しい | むなしい |
胸もと | 胸さき |
彼の | 王子の |
返済(かえし)て | 返(かえ)して |
*1: 速穂児18歳、飛羽矢20歳
*2:国毘古が穂波を諫める言葉である「おまえらしくない口軽さだぞ」が、なぜか間違って椎根の台詞になってしまっている
*3:飛火野とは…https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%98%A5%E6%97%A5_(%E5%A5%88%E8%89%AF%E5%B8%82)銀金的には「春日野の果て」
*4:玉枕とはこういうものらしい。http://www.city.takatsuki.osaka.jp/rekishi_kanko/rekishi/rekishikan/jidai/kofun/1327658589251.html(高槻市HP)
比較・最終章(9巻)
(8)動き出す夜
納めろ | 収めろ |
垂れ布 | 垂布 |
傭兵(さといへい) | 傭兵(やといへい) |
垂れ布のむこうにいる男 | 床下に潜んでいる男 |
大王 | 華やかな大王 |
教えてくれないかな | 教えてはくれぬかな |
やがて腹を括ったかのように、あっさりといった。 | |
それは、もののたとえで…… | それは、もののたとえで……? |
(9)春日野の朝
星月夜 | 月夜 |
三十歩(みそほ) | 三十歩(みそあし) |
顕れをみたとき、 | 顕れをみれば、 |
見える | 見えた |
(10)息長の火箭
お還えり | お還り |
なぜ、佐保なんだ | なぜ、佐保なんだ! |
風にそよぐ葦草のように、 | (削除) |
あまりにも揃いすぎる | あまりにも災禍が揃いすぎる |
(11)拉致う者
全身が怒りで | 怒りで全身が |
娘 | 村娘 |
嬉しいだろうと思って…… | 嬉しいだろうと思って、持ってきたの…… |
鮮明(まざまざし)く | 鮮明(まざまざ)しく |
幾日か | 王子たちは幾日か |
向けられたものだった | 向けられたものに違いない |
忌矢(いみや) | 忌矢(いわいや) |
(12)佐保に入る
唐黍の粉袋 | 蜀黍の粉袋 |
絶たれ | 断たれ |
この十年あまり | この二十年あまり |
二十六、いや七年前の | 二十七、いや八年前の |
甲(かぶと) | 甲(よろい) |
短甲を避けて、まもりのない項 | 男が身に着けた短甲を避けて、まもりのない黒ずんだ項 |
血を流しながら | 血を流して |
助けようと | かかえて |
かすかな声をあげていた | かすかな声をあげて、まだ生きていた |
馬に乗ったまま | 父王は馬に乗ったまま |
日子坐の馬が近づいていた | 日子坐がそこにいた |
女の死体 | 女の骸 |
美知主の弱さ | 美知主の優しさ |
苛烈(かれつ)さ | 苛烈(はげし)さ |
忌矢(いみや) | 忌矢(いわいや) |
二十数年前 | 二十八年前 |
ここに来ているのだ | 俺はここに来ているのだ |
女首長 | わが女首長 |
国毘古はあっさりといった。 | |
何回か | 幾度か |
(13)死の臭い 日の勾玉
二十七年前 | 二十八年前 |
心にうかんだ | 心をよぎった |
穏やかで人馴れした男ではない | 穏やかで人馴れした、ものごしの柔らかな男ではない |
会ったことも、見たこともない男だが。 | |
波美の者 | 並みの波美の者 |
真秀だ | 真秀だった |
半年ほどの間 | 向こう半年ほどの間 |
その娘たち | その娘 |
見たせいだった | 見たせいかもしれなかった |
幸せに生きられたはずだった | 幸せに生きられたかもしれない |
父王・日子坐 | 父の日子坐 |
そうだな。 | |
木棺(もっかん) | 木棺(ひつぎ) |
(14)迷い込んだ小鳥
甲(かぶと) | 甲(よろい) |
侮るものなのですよ | 侮るものだよ |
悟った | 思い定めた |
宴があってから、ときおり氷葉州姫の御館に遊びにくるようになっていた | 宴があった翌日、すぐにも氷葉州姫の御館に遊びにきたのだった |
だが、そうするには請負代がいる、おまえにそれが支払えるのかな、と。 |
(15)王宮の妻屋に
唇が | 口もとが |
ふと目を伏せた | あわてて目を伏せた |
穂波の…… | 穂波の心を…… |
眦に刻まれた | 眦をいろどる |
近いうちに | その年の新嘗の頃には |
片足 | 片足首 |
そっとしておいてくれるわ | そっとしておいてくれるもの |
獣 | 雄々しい獣 |
身ぶり | 口ぶり |
(16)真秀と佐保姫
遠い淡海 | まだ見ぬ遠い淡海 |
これは霊力だ。(中略)佐保姫は息をのんだ。これは禍霊だ。 | 佐保姫は息をのんだ。これは霊力だ。(中略)これは禍霊だ。 |
力をふりしぼって妻屋に足を踏みいれると、氷葉州の妃の足もとに | 佐保姫は力をふりしぼって妻屋に足を踏みいれた。氷葉州の妃の足もとに |
卓子に腕をついて | 卓子の縁を両手でつかんで |
髪を摑まれて……? | 髪を摑まれて…… |
比較・最終章(8巻)
最終章 暁に甦る(承前)
(1)纏向の玉垣宮に
黄金(きん) | 黄金(こがね) |
十市(とうち) | 十市(とおち) |
綾絹 | 生絹 |
贈り物 | 贈りもの |
足繁く | 足しげく |
和邇領内に移れば。 | 歌凝姫が和邇領内に移れば。 |
敷いて | しいて |
午前 | 昼間 |
身の回り | 身のまわり |
朱 | 紅汁 |
暖かい | あたたかい |
そのためなら、歌凝姫よりもさらに美しい姫をこの手で捜し出して、大王に当てがってもいい! |
(2)ひそやかな謀叛
まじった | まじる |
三輪大王(みわのおおきみ) | 三輪の大王 |
怨嗟(うら) | 怨嗟(うらみ) |
伸びる | 延びる |
賑やかな | にぎやかな |
ありましたか | おありか |
日継ぎの王子 | 日継ぎの王(みこ) |
見え透いた | 見えすいた |
死に物狂い | 死にもの狂い |
(3)独りのとき
ごく弱い霊力をもつが | 霊力をもつ神人だが |
浮かべながら | うかべながら |
跡 | 後 |
二十 | 二十歳 |
その気配 | 彼のこわばった気配 |
早馬がわりの……」(中略)「早馬がわりのわたしには、 | 早馬がわりのわたしには……」(中略)「わたしには、 |
「女首長どのが闇見を……」 | |
立ちつくしていたのかもしれない | 立ちつくすばかりだったのだ |
御影とその子どもたちの行方を告げた | 御影とその子どもたちが淡海にいると告げた |
(4)春の嵐
押しつつむ | おしつつむ |
嘘ではなかったのか……。 | 聞きちがいではなかったのか……。 |
緑濃い夜風が | 透きとおるような夜風が |
孕んでいるときだけは、ほかの女に手をだすものではない | 孕んでいるときは、新しい女に手をだすものではない |
首もと | 首すじ |
おだやかな気性と華やかな容貌とあいまって | おだやかな気性と華やかな容貌があいまって |
佐保彦はおもわず歌凝姫を抱きしめた | 佐保彦は口封じのために歌凝姫をつよく抱きしめた |
赤かった | 赤く染めていた |
走り寄ったとたん | 走り寄るやいなや |
目を瞑った | おちつくために目を瞑った |
もしかしたら俺に会うために? 「なにかあったのか」 |
なにがあったのか。 「どうしたんだ、いったい」 |
受けいれなければならない | 受けとめなければならない |
浮かべながら | うかべて |
押さえた | 抑えた |
朱 | 紅 |
全身に怒りを漲らせ | これまでは全身に怒りを漲らせ |
庇っていたと | 庇っているように見えた、と |
なんの前触れもなく、ふいにいった | なにひとつ説明せずに、そういった |
(5)あかされる伝説
来るという闇見 | 来るということ |
表だって母を話題にしたことはなかった | とうに母に歩みよろうとはしなくなっていた |
それはまさか……! | それはまさか…… |
前巫女 | 前巫女姫 |
泣きさけびながら産婆が子を取りあげたとき | あまりのことに気を失いかけた産婆が、なんとか子を取りあげたとき |
前巫女姫 | 妹姫 |
前巫女姫 | 巫女姫 |
続いているようだった | 続いているようですな |
及ばぬところで、畏れられていた | 及ばぬ運命を背おい、翻弄ばれた |
知ってしまったのだろうか | 知ってしまったにちがいない |
若葉の匂い | 木々の匂い |
老木というよりも布のように | 今にも枯れ朽ちる老木のように |
(6)大闇見戸売
意味さえ | 言葉さえ |
繰り返す | 繰りかえす |
身の周り | 身のまわり |
幾筋 | 幾すじ |
憎い男の子に | 憎い男の、子に |
ふと胸をよぎったのだ | ただ胸をよぎったのだ |
白い腕をひろげて | 白い腕をさしのべて |
すべてが | いくつもの幻影が |
押し流して | 押しやって |
見通したい | 見とおしたい |
囁かれていたのだ | ひそかに囁かれていたのだ |
思えた | 思われた |
死を悼んでいる | 死を悼んでいる子どもたちのうち |
そう王子は | そう、王子は |
(7)佐保の王
切り返す | 切りかえす |
その死が | その死を迎えるのが |
くり返し | くりかえし |
真澄でありまだ会ったこともない | 真澄であり、まだ会ったこともない |
かわいそうだ | 妹がかわいそうだ |
押さえ | おさえ |
にわかに湿り | 湿っており |
合わせ | 袷 |
目を感じる | 視線を感じる |
なぜ!? | なぜ。 |
あの人というのは | あの人…… |
浮かんだ | うかんだ |